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マンジャロ外来

マンジャロ(チルゼパチド)

マンジャロは2023年4月に発売されたばかりの2型糖尿病に対する週一回自己注射製剤です。

血糖依存性のインスリン分泌促進により、低血糖の危険性が非常に低く安全かつ強力に血糖をコントロールし、さらに、脳の食欲中枢に働きかけ、強力な食欲抑制作用及び、腸管の蠕動運動抑制作用による満腹感の維持、空腹感の抑制作用があり、結果、摂取カロリーの減少及び体重減少をもたらします。基本的な食事、運動療法の併用により血糖の正常化、インスリンからの卒業、減量による睡眠時無呼吸症候群のCPAPの卒業、血圧の改善、メタボリック症候群の卒業が期待できます。

まだ処方開始から半年程度ですがインスリンを卒業しHbA1c6.5未満を達成した患者さんが複数名出てきています。50歳代までの比較的若年の肥満2型糖尿病であれば、かなり高い確率でインスリンを卒業できる手応えを感じます。

新薬ウゴービに関してはこちら

※非糖尿病の肥満症に対しては現在保険適応は認められておりません。

肥満症に対しては恐らく1,2年後には承認されるかと思いますが、肥満症で保険適応となった場合はウゴービと同様に下記の2つの条件が必要かと思います。

①BMI が 27kg/m2 以上であり、2 つ以上の肥満に関連する健康障害を有する肥満症

②BMI が 35kg/m2 以上の肥満症

 

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HbA1c改善効果

マンジャロ(チルゼパチド)総合製品情報概要より

 

24週以後HbA1cは下がり切って52週目でも低い値をキープしています。

HbA1cの変化量は5mgでも−2.4と非常に大きく、いままで、これほど強力にHbA1cを減少させる薬剤はありませんでした。

 

マンジャロ(チルゼパチド)総合製品情報概要より

 

上の表の中央の棒グラフはHbA1c6.5以下達成の割合ですが、5mgでも92%を達成しており血糖値の寛解、正常化が期待できる薬剤です。

 

体重の減量効果

マンジャロ(チルゼパチド)総合製品情報概要より

 

日本人を対象とした臨床試験(SUPASS J-mono)で平均BMIは28.1です。

マンジャロの特筆すべき作用はその体重減少効果です。

GIP,GLP1の2種類のペプチドが脳の食欲の中枢に働きかけ食事摂取量の低下をもたらします。

マンジャロ15mgではベースラインの平均体重78.9kgに対し52週後に−10.7kg(−13.9%)を達成しています。

また、GIP,GLP1の腸管運動抑制効果により胃で食物が長くとどまることで間食が減る効果もあります。

体重減少に伴い、血圧の改善、悪玉コレステロール、中性脂肪、尿酸の減少、AST、ALT、γGTPの減少、善玉コレステロールの上昇、内臓脂肪、皮下脂肪の減少を認めます。

さらには閉塞性睡眠時無呼吸の寛解、CPAPを離脱できる可能性があります。(当院では睡眠時無呼吸症候群の管理も行っています。SGLT2阻害薬を併用しCPAPを離脱することを目標に食事、運動療法を処方します。)

さらに、心血管イベント、脳卒中イベントの低下が期待され、現在臨床試験が進行中です。

強力なHbA1c低下効果によりこれまでは経口血糖降下薬を複数内服していた肥満2型糖尿病患者さんがマンジャロ1剤で血糖コントロールが安定しさらに降圧薬、脂質異常症治療薬を休薬できる可能性があります。

また、採血で自己インスリン分泌がある程度確認できる場合、速効型インスリン、持効型インスリンを使用中の方がマンジャロとSGLT2阻害薬の併用でインスリンからの離脱が達成できる可能性があります。当院ではデータを見極めて積極的にインスリンからマンジャロ+SGLT2阻害薬に切り替えていく方針です。

 

副作用

マンジャロ(チルゼパチド)総合製品情報概要より

 

副作用は悪心、便秘、下痢などの消化器症状を比較的高率に認めます。

悪心、嘔吐で薬の継続を断念する症例も比較的多い薬剤なので注意が必要です。

上記表では上咽頭炎の頻度が高いですがコロナ流行期のデータであり、マンジャロの副作用ではなく風邪あるいはコロナ関連の事象と考えます。

 

低血糖

マンジャロ(チルゼパチド)総合製品情報概要より

 

GLP1受容体作動薬は血糖依存性にインスリン分泌を促進するので理論的に低血糖を起こしにくい製剤です。マンジャロ5mgでは低血糖を認めていません。マンジャロ15mgでは重症低血糖は認めていませんが、わずかに低血糖の懸念があります。

1日1食など極端な食事制限をせず1日3食摂取して、3食それぞれ摂取カロリーの50%ほどを炭水化物で摂取すれば低血糖は大概は防げると考えます。

 

マンジャロの適応

2型糖尿病に対して保険適応がありますが、その中でも糖尿病発症早期で膵臓からのインスリン分泌能が保たれ、肥満によるインスリン抵抗性が高い40歳から50歳代の比較的若い層が一番良い適応かと考えます。

ここ1,2年で健康診断で耐糖能異常、あるいは糖尿病を指摘された方、あるいはその後糖尿病内科を受診し食事、運動療法等を受けたけれどもドロップアウトしてしまった方、あるいは通院して経口血糖降下薬を複数内服しているけれども体重が横ばいでBMIが25を超えている方にはマンジャロがゲームチェンジャーになると考えます。かかりつけ医がいる場合は一度マンジャロを提案してみる事をおすすめします。

痩せ型、高齢、糖尿病罹患歴が長い、内因性インスリン分泌が低下している症例は慎重に適応を考慮する必要があります。

2型糖尿病の基本は食事療法、運動療法です。肥満2型糖尿病の患者は20歳の頃の体重に戻れば大概血糖は正常化するはずです。実際、食事療法、運動療法で20歳の頃の体重を達成できる患者さんはほとんどいません。

マンジャロは食欲の中枢に働き食事療法のハードルを大きく下げる薬剤です。

食事療法が軌道に乗ると有酸素運動、筋力トレーニングに対してのモチベーションも向上し好循環が生まれます。

マンジャロを休薬するとリバウンドします。しかし健康的な食生活に慣れ、有酸素運動、筋力トレーニングが生活習慣となればマンジャロを減量しいつの日か休薬後もリバウンドせず体重をキープできるかもしれません。

InBody970で定期的に体組成を計測し、数値化して食生活を是正し、有酸素運動、筋力トレーニングが生活習慣となればマンジャロ休薬後も体重をキープでき、高血糖に起因する代謝異常を改善することに加え、糖尿病に特徴的な合併症、および糖尿病に起こりやすい併発症の発症、増悪を防ぎ、健康人と変わらない生活の質を保ち、健康人と変わらない寿命を全うするという糖尿病治療の目標を達成できる可能性があります。その状態を達成できれば患者さんも医療経済にもそして私のとっても三方良しとなります。というのも私にとっては患者さんが健康を取り戻すことがマンジャロ外来、メタボダイエット外来を営むやりがいとなるからです。

1型糖尿病やインスリン治療中でも血糖コントロールが不安定な糖尿病患者さんは糖尿病専門医の主治医に診て頂くべきです。しかしそれ以外の経口血糖降下薬、GLP1製剤でコントロールできる、特に肥満2型糖尿病は糖尿病認定医、総合内科専門医で対応できます。

私は循環器専門医でもありますが、急性期病院勤務時は糖尿病性腎障害で腎機能を失った糖尿病透析患者さんの動脈硬化の極限のガチガチの石の様な動脈を広げるカテーテル治療に10年ほど携わり、インスリンを含めた2型糖尿病の血糖コントロールにも長年、総合内科専門医として従事してきました。糖尿病は全身の動脈を、ひいては全身の臓器をボロボロにする病気です。糖尿病の馴れの果ての悲惨な症例も数多く診療してきました。

糖尿病は行き着くところまで行ってしまうと取り返しが付きません。早期介入が大事です。糖尿病の初期の肥満2型糖尿病患者さんがゲームチェンジャーであるマンジャロの力を借りて食事療法のハードルを軽く乗り越えて、さらに運動が生活習慣の一部となり、さらにはマンジャロを卒業しても血糖の正常化を達成しながらも体重を維持できれば健康寿命が延長しますし、まさにアンチエイジングのひとつと言えるのではないでしょうか?

当院の周辺は他県からの単身赴任の方が比較的多く住んでいらっしゃいます。2型糖尿病を患い、肥満傾向で過去に食事、運動療法の指導を受けたけれども血糖値のコントロールが今ひとつ、あるいは体重の減量が伴わない方はこの新薬でHbA1cの改善、あるいは体重の減量が達成できる可能性があります。また、肥満2型糖尿病でインスリン注射を毎日3回、4回注射している患者さんがマンジャロとSGLT2阻害薬でインスリンを卒業できる可能性があります。一度ご相談ください。

 

マンジャロの今後

 

N Engl J Med 2022; 387:205-216をもとに作成

 

非2型糖尿病で肥満による健康障害を抱えている患者に対して食事、運動療法併用下のマンジャロ投与群で72週後に最大20%弱の減量を達成した海外の臨床試験(SURMOUNT-1)の結果が2022年6月に権威あるThe New England Journal of Medicine誌に発表され個人的に衝撃を受けました。

かつて2型糖尿病でしか適応がなかったオゼンピック(一般名セマグルチド)が今年、肥満症治療薬でウゴービ(一般名セマグルチド)が製造販売が承認されたようにマンジャロ(一般名チルゼパチド)も1,2年以内には国内で商品名を変えて、肥満症治療薬での保険適応が承認されると思います。

今後GLP1関連の領域はインパクト、患者volumeから多くの富をもたらすことは確定的なので、資本主義の権化である世界のメガファーマが新薬を開発中で多くの臨床試験が進行中です。

先日、リベルサス50mgの非糖尿病肥満患者への臨床試験でウゴービと同等の-15%の体重減量効果が得られたと発表がありました。マンジャロは商品名をかえて肥満症治療薬として2023年度内に米国とEUで当局の承認を申請する予定です。また、内服方法に制限のない経口GLP1受容体作動薬や脳の他の食欲中枢に働きかける薬など複数の新薬が続々と誕生する予定です。

 

使用方法

マンジャロ(チルゼパチド)総合製品情報概要より

 

針付きのペン型の自己注射薬です。お腹周りに器具をあてて押すだけで薬剤が皮下注射されます。痛みはわずかです。

使用したキットは医療廃棄物なのでクリニックで回収、廃棄しますので受診時に持参ください。

 

注意点

①悪心、嘔吐で薬の継続を断念する症例も比較的多い薬剤なので注意が必要です。

②臨床試験のデータでは食事、運動療法併用下のマンジャロの注射によりHbA1cは改善するにもかかわらず体重が横ばいの症例が稀にあるようなので注意が必要です。

③増殖糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、急性期治療を要する非増殖糖尿病網膜症を認める場合はマンジャロ投与により急速に血糖が改善し結果、糖尿病網膜症の悪化を認める可能性があるため眼科の通院歴、所見をみて適宜投与前に眼科受診をお願いすることがあります。

④新薬のため発売後1年間は2週間に1度通院する必要があり、忙しい方には難しいかもしれません。

⑤医療費に関してはこれまでの内服療法の費用に加え、在宅自己注射指導管理料650点、導入開始3ヶ月以内は導入初期加算580点が加算されますので導入初期3ヶ月以内は3割負担で3700円ほど月々の医療費が増えます。

さらに薬剤費が3割負担で2.5mgで月々2300円ほど、5mgで月々4600円ほど医療費が増えます。

しかしながら他の経口血糖降下薬(血圧の改善、脂質異常症の改善を認めれば降圧薬、脂質異常症の薬も減薬できる可能性がある)が減らせるので薬剤費の増加はもう少し抑えられます。

また、食事摂取量が減りますので特に外食が多い方は増えた薬剤費、医療費を相殺できる可能性があります。

医療費は増える可能性がありますが、順調に減量し、血糖の正常化が達成できれば将来の糖尿病による神経障害、網膜症、腎症などの合併症による医療費を減らせる可能性がありますし、なにより健康な体を取り戻せば健康寿命が延長しお金にはかえられません。

 

 

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